ペルシャ・絹と銀糸モール糸刺繍裂一部分(19世紀初頭)
ペルシャ美術において、とても特徴的なデザインの1つに左右対称で唐草にメダリオンが配されたものがあります。
この刺繍裂も正にそのタイプのデザインで、ポピュラーな振り返る小鳥を加えています。
ペルシャ・ササン朝から始まり中国の唐代にも流行したパルティアンショットと呼ばれる、騎乗の人物が後ろ向きに弓を射るデザインから始まって、ペルシャ人は振り返りの形に美を感じるのかもしれません。
動物などもよく振り返っている事があります。所謂、見返り美人のようなニュアンスを持ったものです。

この刺繍は絹糸に銀糸を巻きつけた糸を用いて、刺し方を変えることによってデザインに変化とリズムを与えています。
刺繍に用いた絹糸の色合いは、ペルシャのテキスタイルに好まれて使われたパステルカラーです。
裏にはガーゼのような粗く薄く織られた生地を補って、その上から刺繍が施されています。

インドと同じく、ペルシャの染織美術も歴史が古く、多種多様なものが作られました。
エジプトで発掘されたものなどの中にも含まれており、まだまだ謎の多い研究し尽くされていない分野です。


Copyright (c) 2005-2007 Gallery Tulip. All rights reserved.