北西ペルシャ・シャーサヴァンマフラッシュ(19世紀)
マフラッシュと呼ばれる、寝具類を入れる入れ物として箱型に作られたキリム。
芯は入っていないので、中身が入らないと布としてたためて便利な収納袋となっています。
この写真のものは、中央のパネルが綴れ織、上下の部分がスマック織で織られていて、底の部分がプレーンな縞柄です。

北西ペルシャでは、この様な織り方以外にも、全てスマック織で作られたもの、綴れ織のみのものなど、ヴァリエーションがあります。
多くがパネル部分だけを解いて1枚のキリムとされ市場で取引されるので、オリジナルの状態のものはあまりありません。
シャーサヴァンのものは蓋部分は無く、皮などが使われることはありませんが、南の方のものは蓋が付いていたり、皮ベルトが付いていたりと民族によってその特徴があります。どれも用途は殆ど同じなので、箱型という基本形は共通です。

アンティーク絨毯の業界では、マフラッシュと言えばこれを指します。
何故だかイスタンブール辺りの絨毯屋はこれをベシク(揺りかご)と呼んでいる事が多いようです。
いつからそうなったのか、また何故かはわかりませんが、恐らく初めてこのタイプがイスタンブールの市場に出た時に、見た目で考え付いたものがそうで、それが代々言い継がれて来ているのかも知れません。この様な不思議な伝承は色々あるのでしっかりと見極めが肝心です。


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