ペルシャ アンティークキリム

ペルシャ西南部、ヤラメの小型キリムです。(1900年代初頭)
商品として製作されたものでない限り、オリエント地方では小型のキリムを製作することは稀です。通常これ位のサイズのものは、袋物やクッションカバーの表面に使われたものが殆どです。ですから、そこに属さないこのキリムは一体何者なのでしょうか。(これはオリジナルサイズ)
答えは、お祈り用のものを収納し、更にお祈り時に下に敷いて使用していたと思われます。
トルコでは、ミヒラーブと呼ばれるモスクにあるメッカ方面にあるアーチ型の窪みのデザインのものが多く見られますが、それらはこれよりも大型のものが主流となります。また、ヤラメ近所のカシュガイのものは、これよりも更に小型です。

キリムや絨毯に関して、どこのものが優秀か、また細かい方が価値が高いのかという疑問を耳にします。
これはケースバイケースです。アンティークキリムにおいては、細い糸で細かく丁寧に仕上げたものに素晴らしいものが多い反面、ざっくりと素朴に作られたものに大胆さと力強さを感じ、それが大きな魅力である場合も多いと言えます。また、どの民族が作ったから必ずしも価値が高いという事も無く、人気の地域などあるにしても、何より人が作るものですから、それなりの個性が出てくるのが面白味でしょう。
織り方の技術においても色々ありますが、これは綴れ織の中でも、はつりの無いタイプのものですので、少しがっちりとした印象があるかも知れません。

キリムについては、特にそのモチーフの意味について尋ねられることが多いのですが、ほぼ間違いの無い解説が与えられるものは少なく、キリスト教絵画のシンボリズムを語るようにはいかないのが現状です。様々な他の美術や考古学的発見のものなどと照らし合わせて研究がされてはいますが、本来の意味がわからないまま現地の織り手が名前を付けたものが、あたかもその本来の意味であるかの様に大きく広まっていることが多いので、色々なものに書いてあるモチーフの意味はファンタジックで楽しいですが、必ずしも真実でない場合が多い事をお伝えしておきたいと思います。


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